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schedule2025年11月18日
病院経営において、附置駐車場は「患者サービスのためのコストセンター」と見なされがちです。しかし、診療報酬改定が続く中、駐車場は病院経営を支える「非診療収益の柱」へと転換し得る、価値あるアセット(資産)です。
多くの病院では、「管理が煩わしい」「トラブル対応が本業を圧迫する」といった課題 や、慢性的な「駐車場不足」 が患者満足度の低下を招いています。しかし、これらの問題は、駐車場をアセットとして戦略的に管理・運営することで解決できます。
本稿は、病院経営コンサルタント、オーナー、デベロッパーの皆様を対象に、大規模病院附置駐車場の月次収支を最適化し、収益を最大化するための高度な分析手法と具体的な改善フローを、専門的見地から策定します。
目次
1. 駐車場のパラダイムシフト:コストセンターからプロフィットセンターへ
駐車場の課題は、「患者サービス(低料金・無料化)」と「収益性(管理コスト・不正利用)」の二律背反にあると誤解されています。しかし、本質的な問題は、管理を放棄あるいは内製化することで生じる「非効率性」にあります。
駐車場の有料化・機械化は、患者サービスと相反しません。むしろ、専門的な運営を導入することで「迷惑駐車・放置駐車」を排除 でき、真に駐車場を必要とする外来患者が確実に利用できる環境を維持できます。
アセットマネジメントの視点とは、患者サービスを「従来通り保ちながら」(割引認証の活用 )、「時間外等の空き車室を有効活用」 して外部一般利用者から新たな収益を得る、プロフィットセンターへの転換を意味します。
2. 収支最適化の第一歩:月次収支の「解剖」とKPI設定
収益改善は、正確な現状分析から始まります。従来の「稼働率」だけでは、収益の実態は見えません。
導入すべき新KPI:RevPASH (Revenue Per Available Space-Hour) ホテル業界の「RevPAR(販売可能な客室1室あたりの収益)」 の概念を駐車場に応用し、**「RevPASH(提供可能な1車室・1時間あたりの収益)」**を最重要KPIとして設定します。これにより、稼働率と単価の両方を考慮した真の収益効率を測定できます 。
データドリブン分析:セグメント別利用実態の可視化 車番認証(LPR)システムや割引認証データを活用し、全利用者をセグメント別に「解剖」します 。
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外来患者(割引適用)
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外部一般(時間貸し)
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外部一般(最大料金適用)
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病院職員(定期契約)
この分析により、どのセグメントがRevPASHに貢献しているかを可視化できます。さらに、職員の利用実態を「通勤利用(日中ピーク)」と「車庫利用(夜間)」に分類 することで、外来患者のピーク時に「隠れた空き車室(収益機会)」を特定できます。
経営層は、これらのKPI(セグメント別売上、RevPASH、満車発生回数 、クレーム件数 )を月次ダッシュボードで定点観測する体制を構築すべきです。
3. エリア・競合分析と戦略的ポジショニング
自院駐車場の価格戦略は、エリア特性と競合環境によって決定されます 。
マーケットリサーチの手法 「周辺地域の駐車料金の相場」 を調査するだけでは不十分です。重要なのは、競合が設定する「最大料金」のルールを徹底的に分析することです。
例えば、競合が「当日最大(24時でリセット)」 という利用者にとって不利なルールを採用している場合、自院が「入庫後24時間・繰り返し適用あり」 という明快なプランを導入するだけで、近隣のオフィスワーカーや宿泊者など、長時間利用の外部需要に対して強力な競争優位性を確立できます 。
外部需要の特定 周辺施設(商業施設、オフィス、駅) の特性を分析し、自院のピーク(平日日中)と重複しない外部需要(例:住宅街の夜間車庫需要、商業施設の週末需要)を特定します。これらの「空き時間」 を活用することが収益化の鍵です。
4. 利用者セグメント別・戦略的プライシングの設計
分析に基づき、利用者セグメントごとに最適な料金体系を設計します。
4.1. 外来患者(サービス重視):満足度と回転率の最適化
患者サービスは聖域ですが、過度な優遇は「駐車場不足」 の原因となります。例えば「1日100円」 といった低廉すぎるフラット料金は、目的外の長時間駐車を誘発します。
最適モデル(例):『割引認証により、最初の4時間まで200円。以降は一般料金』
このモデルは、大半の外来患者の平均滞在時間をカバーしつつ 、不要な長時間駐車を抑制し、駐車場の回転率を向上させます。
4.2. 外部一般(収益重視):収益の最大化
空き車室を収益化する「外部一般」料金は、戦略的に設計します。
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時間料金: 競合相場 に基づき設定。
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最大料金: エリア特性 に合わせます。オフィス街近辺なら「平日昼間最大」、繁華街・住宅街なら「夜間最大」 を設定し、RevPASHの低い時間帯の収益を底上げします。
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アドバンスド戦略(ダイナミック・プライシング): 近隣でイベントが開催される「特定日」 には、AIが需要を予測し、外部一般向けの料金(特に最大料金)を自動的に引き上げる、または適用除外とします 。これにより、患者用の車室を確保しつつ、高単価の外部需要から適正な収益を得ることが可能になります。
4.3. 病院職員(管理重視):コスト負担の適正化と機会創出
職員用車室は、厳格な管理(許可制 )が必要です。LPR分析 で特定された「日中のピーク時に外来患者と競合する職員(通勤利用)」は、可能な限り別駐車場へ誘導(パーク&ライド)するか、公共交通機関の利用を促します。
それによって生じた「一等地の空き車室」や、分析で判明した「日中使われていない職員枠」 を、高単価の外部一般(時間貸し・月極)に転用することで、新たな収益源を創出します。
5. 運営効率化と管理コスト削減のテクノロジー
収益を最大化する一方、運営コストの最小化も重要です。
キャッシュレス・LPR(車番認証)の導入 キャッシュレス決済(QR、ICカード、クレジットカード) は、利用者の利便性を飛躍的に向上させる だけでなく、運営側の「現金管理・輸送コスト」を劇的に削減します 。また、「紙幣詰まり」等の機器トラブルも減少し、メンテナンス費用を抑制できます 。
LPR とキャッシュレス決済を組み合わせた「フラップレス・ゲートレス」システムは、入出庫時の混雑()を解消し、患者満足度を大きく高めます。
職員・契約管理のDX 「月極駐車場管理システム」 を導入し、職員や提携先の申込、契約、決済をオンライン化・自動化します 。これにより、管理部門の「煩わしい業務」 はゼロに近くなります。
6. 収益改善の実行フローとPDCAサイクル
戦略の実行と改善は、継続的なPDCAサイクルによって担保されます 。
- Plan(計画): 現状分析(RevPASH、セグメント別収益) と競合分析 に基づき、新料金体系(Sec 4)と収益目標(KPI)を策定します。
- Do(実行): 新料金体系を導入。必要に応じて新システム(LPR、キャッシュレス)を実装します 。
- Check(評価): 月次KPIダッシュボードで収益と稼働状況をモニタリング。目標とのギャップを分析します。
- Act(改善): データに基づき、「料金体系の見直し」(例:最大料金の変更)や「サービス体系の見直し」(例:割引認証プロセスの簡素化)を適宜実行します 。
7. 運営体制の最適化:外部委託(アウトソーシング)の戦略的活用
「管理が面倒」、「トラブル対応が煩わしい」 という病院が抱える根本課題は、専門業者への外部委託(アウトソーシング)によってのみ解決可能です。
外部委託のメリット 集金・清掃・メンテナンス・24時間365日のコールセンター対応・クレーム処理 といった「煩わしい業務」 の全てを委託できます。これにより、職員は本来の病院業務に集中できます。また、機器導入による無人化で人件費・運営コストも削減可能です 。
契約形態の戦略的選択 重要なのは契約形態の選択です 。
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一括借上げ(マスターリース): 病院は業者から「固定賃料」を受け取る。リスクはゼロですが、リターンも固定されます。
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管理委託(レベニューシェア): 売上から管理料を差し引いた額を病院が受け取る。
収益改善の余地が大きい大規模病院では、「管理委託(レベニューシェア)」 を推奨します。この形態は、業者の収益も病院の収益(売上)に連動するため、業者側に「収益を最大化しよう」という強いインセンティブが働きます。結果として、データ分析に基づく「積極的な改善提案」 が期待できます。
パートナー選定時には、病院運営の実績(緊急車両導線、身障者対応 )、データ分析能力、LPR等のシステム投資能力 を仕様書(RFP)で厳格に評価すべきです。
8. 結論:持続可能な病院経営に貢献する駐車場アセット戦略
大規模病院の附置駐車場は、もはや「ノンコア資産」ではありません。その立地と規模は、それ自体が価値を持つ「戦略的収益資産」です。
本稿で示した、(1) RevPASH()による正確な分析、(2) セグメント別()の戦略的プライシング、(3) テクノロジー()による効率化、(4) 専門家とのレベニューシェア()というフローを実行すること。
これこそが、駐車場を「コストセンター」 から「プロフィットセンター」 へと転換させる最適解です。この変革は、不正利用を排除し 、患者の利便性を向上させると同時に、病院本体の診療業務を支える、持続可能な非診療収益の基盤を確立します。

